東馬窯の特徴といえば、梅華皮(かいらぎ)や蛇蝎(だかつ)。簡単に言うと陶器の表面に入る小さなヒビ(貫入)です。唐津焼で見る梅花皮は高台(陶器の一番底の足)だけが縮れた模様になっていることが多いんですが、この模様が高台だけじゃなく陶器全体に出たらおもしろいのではないかと思って、独自に研究しました。
陶器の原料になる土とその表面に塗る釉薬の収縮率が違うことでヒビが生まれます。土と釉薬が互いに引っ張り合って、ヒビが入っていくんですね。この引っ張り合いをもっと強くしたらどうかと、試行錯誤を6〜7年しまして、全面を縮れさせることができるようになりました。うちの代表作のひとつですね。「なんだろう見たことのないこの器は」と、いろんな展示会で目に止めていただきますね。梅華皮を強調した器は他にもあるんですが、うちのヒビは極めて小さく出ている。その分、手触りもよく、使えば使うほど模様が浮き上がってくるんです。水分が地肌に染みて、艶が出て、個性が際立っていくんですね。その味わいが、うち独自の研究成果です。
釉薬を作る専門の会社から「この釉薬を売ってくれ」と言われるんですけど、他の土では使えないんですよね。うちの工房のすぐ外にある、ここで取れる土に合わせて作ってあるから。
名称 | 東馬窯 |
窯主 | 馬場 宏彰 |
住所 | 〒849-2302 武雄市山内町鳥海21096-1 |
電話番号 | 0954-45-3308 |
FAX番号 | 0954-45-3308 |
営業時間 | 10:00〜18:00 |
定休日 | 不定休 |
SHOP | https://toumagama.base.shop |
うちで作る陶器の材料は、9割が武雄産で、地元の材料です。土はうちの裏山で採っています。土は土屋で買うという作家さんも多いですけど、自分で掘る土もおもしろいものです。掘る場所を30cmずらしただけで、土の質感が変わるんですね。常連のお客様には「掘る場所を変えた?」って見抜かれたりして。
武雄の土は硬くてしっかり焼ける赤土なので、強度が強いんです。焼いた後、叩いてみると高い音が出る。薄く焼いても強度が保てるので、利点としては陶器なのに意外と軽いこと。武雄古唐津と言って、唐津の技法を受け継いでいるんですが、唐津焼より薄く軽いので普段づかいできる唐津焼って言ったりするんです。
もうひとつ、地元の素材というところで東馬窯の特色となるのがレモングラスの釉薬。武雄市役所は「レモングラス課」というのを立ち上げたくらいに、レモングラスの活用と販売に力を入れた経緯があって。焼き物にも使えますか、と市の方から相談を受けたんですね。釉薬の中には、昔から藁灰というのがありまして、稲藁を燃やして灰にして、釉薬の材料に使うということがずっと行われてきました。
レモングラスはイネ科なので、じゃあこれを、灰にしてやってみましょうと。そうしたら、レモングラスにしか出せない淡いグリーンが出たんです。普通、稲藁を釉薬にすると、白かクリームっぽい黄色になります。黒米、古代米は青白くなる。レモングラスはグリーンなんですね。この色の陶器を作ったのは自分が世界初ではないでしょうか。レモングラス釉と銘打って販売しているのはうちだけかもしれないですね。
最近のテーマは、視覚、嗅覚、聴覚の三感です。
ランプ、アロマ、それにスマートフォンを設置するタイプの陶器のスピーカーなどを制作しています。器だけじゃなくトータルに空間を作るという目的の作品は増えてきました。うちの梅花皮がおもしろいということでアクセサリーもよく売れてますね。佐賀県は文具の消費量が日本一ということで、陶器文具の開発プロジェクトにも参加しています。
個人の窯元の良いところはお客様の要望を聞けるところ。特注の感覚で「こういうの作れますか?」という要望にお応えできるわけですよ。長くお付き合いして、ファンになってくださる方もたくさんいらっしゃいます。食器中心で作ってきましたけど、食卓を彩る、生活を豊かにすることにかけては制約があるわけではありませんから、とにかく楽しんで使ってもらえたらいいなと。いろんな要望にお応えできるよう、研究を続けています。