器が完成するのは、窯から焼き上がって出てきた時ではないんですね。料理を盛ったとき初めて真価がわかります。料理が美味そうに見えないと意味がないと思ってやってきました。魯山人が好きで、料理の器をずっとやってきたんです。お客様がいらっしゃると自分で料理をして器に盛りつけてお出しします。料理を盛ったときに器が完成する、器の魅力が倍増する。そういう、一期一会の巡り合わせを見てほしい、体験してほしい思いがあるので、陶器市や展示会も良いんですけども、工房を直接、訪れていただけると嬉しいですね。
工房は山間に向けて奥まった場所にあって、美しい景色です。草木、花、生き物。絵付けのモチーフは、いつも自然の中から発見しています。絵柄がかわいいとよく言われます。「花のカレーパスタ皿」とか「にぎやかな蕎麦猪口」とか器のタイトルもこだわって考えています。名前ひとつでも印象は変わりますから。
最近は、照明、灯りもやってます。料理の器は、少し引き算して作ります。料理を盛って完成するように、一歩か半歩、控えたデザインをする。だからお客様にお渡しする時はまだ未完成の状態なんです。そこで、器の魅力を補うための灯り。食卓だけじゃなく部屋そのもの、空間を彩る灯りづくりもやり始めました。うちの特徴、やりたいことは、変わりつつあるかもしれません。
名称 | 七ツ枝窯 |
窯主 | 山口 元治 |
住所 | 〒843-0002 武雄市朝日町中野7394ー2 |
電話番号 | 090-8621-6181 |
FAX番号 | 0954-23-3856 |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 不定休 |
SHOP | https://nanatuegama.thebase.in |
「七ツ枝」とはここの地名で、作陶に没頭するのに良い場所。工房の目の前に柿の木の果樹園もあり、繁忙期に収穫や剪定のお手伝いをするんですが、その枝をいただいて燃やして灰にして釉薬として使っています。柿の灰は、雑味が少ない綺麗かつ渋い独特の灰釉になるんです。これはもう七ツ枝窯にしか出せない色、艶ですもんね。
もうひとつ、工房の裏山から掘る七ツ枝の土が、かなりオモシロイんじゃないかと思ってるんです。粘土屋さんで精製されたのではない土って、どこか荒っぽい雰囲気になるんですね。でも七ツ枝の土はその荒っぽさと同時に独特の綺麗さが同居しているように感じています。耐火度が低くてすぐ、ぐにゃっとなるんですが、低温でじっくり焼いてあげると、どんどん独特の味がでてくるんです。この味わいを、この作品が生まれている景色の中で楽しんでいただきたくて、ぜひ七ツ枝に足を運んでいただきたいと思うんです。
僕は不器用な作家なんですね。作るのに時間がかかるし狙って作ったらダメなんですよ。良い作品ができても、多分もう一回、同じものは作れない。料理してても同じで、前に作った味と同じ味を作れない。だからもう一品一品ね、そのときの自分にしか作れないものだけ作ってやろうと。プロなんだからそれじゃダメだと思い悩むこともありましたが、一周まわって「無心」で作るのが一番なんじゃないかと。もちろん焼き物をやる以上、技は絶対必要ですね。長年続けることでしか身につかない技術。そこに「無心」を掛け合わせる。自分は「土と炎と心と技と」と言ってるんですけど、焼き物は芸術性と職人性、どちらも大事。僕は芸術家を名乗りたくはないし職人になるのも嫌。両方の気質を両立させたいんです。